アミン・クラウス 最終話 ― 雪が静かに降り積もるとき ―
世界は眠っていた。
柔らかな寝息とほのかな常夜灯に包まれた家々で、子どもたちは明日を夢見ていた。
木の下には包装紙が散らばり、皿の上には半分ほど食べかけのクッキーが残されている。
外では、雪が屋根の上に静かに積もり、誰にも踏まれず、平穏に時を待っていた。
そのすべてを見下ろす高みで、アミン・クラウスはそりを導いていた。
トナカイたちは落ち着いた足取りで進み、鈴の音も今は控えめだった。
まるでこの瞬間の重みを理解しているかのように。
アミンは最後にもう一度名簿を確認した。微笑みながら。
すべての名前に線が引かれ、すべての家を訪問し終えていた。
また一つのクリスマスが、無事に完了した。
彼は名簿をそっと横に置き、眼下の世界を見つめた。
しばし、ただ見つめる。
やがて胸に手を当てる。恐れではなく、静かな間として、耳を澄ませるように。
星々が、どこか奇妙に輝いた。
冷たい空気は、重く、厚く感じられた。
アミンの呼吸はゆっくりと落ち着き、微笑みは柔らかくなり、肩の力も抜けた。
そりは自然と高度を下げ始める。
トナカイたちは、即座にそれを察知した。
慌てず、音も立てず、彼らは進路を調整し、雪に覆われた開けた土地へと降下した。
そりは不均一に着地し、静かに滑って止まった。
雪は舞い上がり、やがて落ち着いた。
アミンは前に身を傾け、動かず、赤いコートが白い雪の中で鮮やかに映える。
鈴は鳴らなかった。
救助の到着
夜明け前、助けが来た。
柔らかな光が雪に反射し、穏やかな声がかけられる。
トナカイたちは温かい場所に導かれ、丁寧に世話を受けた。
そりは静かに立ち尽くし、旅の終わりを告げていた。
アミンは眠っているかのように毛布に包まれ、慎重に運ばれた。
病院の廊下は静まり返り、医療スタッフは集中と敬意をもって動き、沈黙の中で協力し合った。
時の流れは奇妙に感じられ、
分が伸び、瞬間が息をひそめたようだった。
やがて、動きはゆっくりと止まった。
医師は手袋を外し、別の者は静かに頭を下げた。
柔らかく、しかし確かな言葉が慎重に告げられる。
アミン・クラウスは、最後の旅を終えたのだった。
北極への知らせ
太陽が昇り始めたころ、その知らせは北極に届いた。
工房の灯りは一つ、また一つと消え、道具は途中のまま置かれた。
エルフたちは自然に集まり、手を取り合った。言葉を失う者もいた。
その朝、雪はいつもより激しく降り、空そのものが悲しみを示すかのようだった。
ミセス・クラウスは、誰よりも早くその感覚を覚えた。
彼女はじっと立ち、一方の手を腹に置き、もう一方の手はテーブルの端を握った。
目を閉じ、ゆっくりと呼吸し、自分自身と、まだ見ぬ何かを落ち着かせるように。
「彼に会いに行かなくては」と静かに言った。
ルドルフが一歩前に出る。赤い鼻がかすかに光る―誇らしさではなく、優しさで。
フロスティ・ザ・スノーマンも続き、無言で solemn な表情を浮かべた。
三人は共に南へ向かった。
病院にて
病院の廊下は静かに反響し、ミセス・クラウスは入れないと言われた扉に近づく。
医療検査官が丁寧に説明した。
「アミンは休んでおり、面会はできません」
言葉は柔らかく、意味は明確だった。
ミセス・クラウスはうなずいた。
争わず、静かに手を扉に置き、目を閉じ、誰も聞こえぬ声で囁いた。
ルドルフは頭を下げ、フロスティは帽子を取った。
彼らはしばらくそこに立ち、やがて南へ戻った。世界の重みを抱えながら。
別れの儀
葬儀は冬空の下で行われた。
雪は静かに降り積もり、地面を純白に覆った。
エルフは列を成し、緑のコートに雪片が舞い落ちる。
トナカイは静かに立ち、鈴は結ばれ音を立てない。
遠くからの友人たち―人間もいれば、そうでない者も―が集まり、静かに並んだ。
中央には赤いリボンと一本の常緑樹の小枝が添えられたシンプルな棺が置かれていた。
物語が語られる。
速さや魔法の話ではなく、優しさの話。
夜遅くまで働き、朝早くから動いた話。
善が大切だと信じ続けた男の話。
あるエルフは、アミンが初めて一人で届けたおもちゃを語った。
また別の者は、誰も忘れないように壊れたそりを徹夜で直した話を思い出した。
最後に、ミセス・クラウスが一歩前に出た。
言葉は少なかった。
ただ、感謝を伝えた―彼を愛してくれたこと、信じ続けてくれたこと、彼の精神を受け継いでくれたことに。
話す間、彼女の手は腹にやさしく置かれていた。その静かなしぐさに、多くの者は気付かなかった。
雪は少し強く降り、
鈴が一度、鳴った。
静かな終わり、優しい始まり
北極に戻ると、工房は沈黙のままだった。
ミセス・クラウスは、アミンの古いコートに包まれ、星空の下に立った。
見上げ、また見下ろし、手はまだ、腹の中で育つ小さな命を守るように置かれていた。
風が暖かさを運んだ。
遥か上空、見えなくとも感じられるところで、鈴がそっと鳴った―祝福ではなく、まだ―約束の音として。
ひとつの遺産は終わりを告げた。
そして、何か新しいものが始まった。
雪は降り続け、
希望は残されたままだった。
終わり!!

